2010/04/13

松井良彦監督(『追悼のざわめき』『どこに行くの?』)が、コメントをご寄稿下さいました。



主人公の青年の孤独感から生まれた人間関係の希薄さや、それを築きあげる

ことができない愚直なまでの不器用さが、映像と音楽をふくめた巧みな演出により、

今の時代性とそこに生きる人間を的確に描いている。

それは、観る側に心苦しさをともなった刺し傷を与える。

興味深く、そして語弊があるかもしれないが、面白い作品である。


松井良彦(映画監督)




松井良彦監督プロフィール(『松井良彦映画自記』より転載)
処女作「錆びた缶空」(1979)は、石井聰亙氏(映画監督)が撮影を担当するが、当時の石井のスピーディーなロックンロール・ムーヴィーとは異質な、重く切ない作品として仕上がる。ホモセクシュアルの三角関係を描いた本作は、ぴあ誌主催のオフシアター・フィルム・フェスティヴァル(現・PFF)に入賞をし、一部に熱狂的なファンを持つ、いわば“カルト・ムーヴィー”の草分け的存在である。
第二作「豚鶏心中」(81)は、在日韓国人の男女の愛と、差別による別れを鮮烈に描いた。公開は、前作「錆びた缶空」で再会をした故・寺山修司氏の天井桟敷館で長期ロードショーを果たした。撮影は、原一男氏。
第三作「追悼のざわめき」88)は、脚本を読んだ故・寺山修司氏に「映画になったら事件だね」と言われるが、松井は強引にクランク・インをくだした。やはりロケ場所やキャスティングが難航し、翌年夏にまで撮影を繰り越すが、1988年5月、今は無き中野武蔵野ホール(2004年5月8日閉館)にてロードショーを開始。同館開設以来の観客動員記録を打ち出した。不運なことは、数ヶ国の映画祭に出品が決定していたにもかかわらず、そのすべてで上映禁止となった。しかし、10年後の1998年、ドイツやデンマーク、ノルウェイの7都市で上映をされ、好評を博した。独立プロ映画としては珍しく、他の作品とともにすべて収益を上げている。
2007年には、映画「追悼のざわめき 〜デジタルリマスター版〜」を完成させ、再度の全国公開を果たし、また、ドイツでの再上映をはじめ香港、オーストラリアでも上映をされ、さらに現在も海外からの上映依頼を受けつづけている。第四作「どこに行くの?」(2007)は、2008年第30モスクワ国際映画祭正式招待作品(パースペクティブ・コンペティション部門)に決まる。その後、ドイツでも上映をされた。
現在、新作映画の脚本を執筆中である。

『松井良彦映画自記』

『追悼のざわめき』(デジタルリマスター版)予告編

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