2010/04/15

連載 撮影回想6 「CO2同期の吉田浩太監督」


「CO2同期の吉田浩太監督」

『にくめ、ハレルヤ!』は「CO2」という映画祭の企画制作部門という、大阪市の助成を受けて制作した映画だが、そのCO2で同じ年に映画を制作した監督の中に現在公開を間近に控えた『ユリ子のアロマ』の吉田浩太監督がいた。

契約書をかわすために訪れた大阪市の市役所で初めて顔を合わせたが、当時すでに「シャイカー」という映像制作会社で勤務していた吉田監督は、立派に社会人というか、大人な印象があった。

契約の場で助成を受ける監督たちの過去作のDVDをもらった。吉田監督の映画は『象のなみだ』という短編作品で、「動物園に出かけたカップルが、彼女が彼に妊娠を告白したことですったもんだする」という内容で、当時、同じように彼女が妊娠した僕にとってかなり痛くつきささるものだった。聞けば吉田監督の実体験をベースに映画にしたようで、なんだか妙な親しみも感じた。

お互いCO2で映画を完成させてからしばらくして、僕は出演した映画『青空ポンチ』が「ゆうばりファンタスティック映画祭」という映画祭で上映される事になり、映画祭に出席することになった。事前にもらった上映ラインナップを見ると吉田監督の名前があり、「CO2」以来会っていなかったし、また「CO2」ではゆっくりと話もできなかったので、再会できることを楽しみの1つに映画祭に出かけた。

しかし、映画祭会場で吉田監督が若年性脳梗塞で入院されているという知らせを聞く。手術が成功し回復に向かっているということも同時に知ったので、ひとまずは安心したが、なんとなく「映画撮るのはもう難しいよな・・・」と思った。

映画祭から帰ってしばらくして、吉田監督からメールがきた。体調もかなり回復していることと、さらにそこには新作を撮るという意味で「復活します」と書かれていた。「脳梗塞から復活して映画を撮ったといえば大島渚『御法度』思い浮かんだが、脳梗塞という病気に対してなんとなくの知識はあるが、実際それが自分のふに降りかかった時のことなんて想像しがたく、とにかくめちゃくちゃ大変なんだろうなぐらいにしか想像できたなかった。ましてや映画を撮るなんて・・・「復活します」の言葉は正直信じがたかった。

しかし『にくめ、ハレルヤ!』公開に向けてあれこれ動き始めた昨年末頃に、『にくめ、ハレルヤ!』で美術とスチールを担当した内堀義之から「吉田監督の新作にスチールで入るんですよ」という話を聞く。

そして先日、内堀が撮ったスチールが使われた吉田監督最新作のチラシを手に取った。
吉田監督はホントに「復活」した。負けてられないなと勇気づけられる。

CO2当時。大阪市役所の前で。右端が吉田監督(CO2HPより転載)

吉田浩太監督の新作『ユリ子のアロマ』
5/8〜 渋谷ユーロスペースにて
公式サイト|http://yurikonoaroma.com/

文:板倉善之

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