2010/03/01

連載 撮影回想 3 「美術」


「美術」

大学時代、粗大ゴミのでる日はよく大学周辺をうろついた。
映画の美術に使えるものをタダでゲットするというのが大義名分で、映画の制作シーズンになると夜な夜な粗大ゴミ争奪戦が繰り広げられていた、かどうかはあまり覚えてないが、友人の家に元粗大ゴミのカッコいい机が置かれていた時は妙なくやしさがあった。
片田舎でおくる大学生活の単なる暇つぶしだったかもしれない。

『にくめ、ハレルヤ!』は、そんな大学生活から抜け出して数年後に撮影した映画だが、「欲しいな」と思った美術道具を全てお金で解決できるほどの美術予算はなかった。そんな中で美術を担当してくれたのは、大学時代やはり最初に書いたように粗大ゴミを漁りながら数々の映画美術を成立させてきた内堀義之(俗称:ボリ)という同じ大学の後輩。

一つよく覚えているのは、彼と『にくめ、ハレルヤ!』の準備中、車で大阪市内を走っている時のこと。急に「止めて下さい」と車をとめて、まっすぐ電柱の下に捨て置かれたゴミの固まりに駆け寄り、大量の卵パックをもって戻ってきた。「これ使えますよ」と誇らしげだった。

そして、それは下記のように使用された。
主人公・裕人の部屋の美術記録写真。壁に貼付けてあるのが、その時の卵パック。音楽をやっている設定だったので、防音用に使用しているという体で使用された。撮影後、この卵パックは裕人を演じた苧坂くんが自宅の防音に使うと言って持ち帰った。

この写真の反対側はこんな風。
彼女と同棲している設定なので、女性が暮らすような雰囲気も。
左上にかかっている絵は、美術助手だった岡藤真衣さんが書いてくれた。
岡藤さんはこのブログで漫画を連載している。

この部屋での撮影。真ん中の女性は、主人公の彼女・明子役の長綾美さん。

この部屋以外に、「某NPOの事務所で、今ではあまり使用されていない」という設定の部屋なんかも作りこんでくれた。雑然と散らかる品々はどこからやってきたのか。

この写真手前に映っているのは、椅子の上に乗せた反対にした椅子の足の部分。これを見た僕が思わず言った「虫みたい」という発言にボリが異常に反応し、その後の撮影中、彼は事あるごとに「虫みたい」と連呼していた。当時は小学生男子が「ムシキング」に熱中していた頃だったかもしれない。

今ではゴミを捨てるにも何かとややこしく、お金をとられたりするケースもあるので、大学時代のような粗大ゴミ漁りも難しいのかもしれない。 あんまりやりたくないけど。

文:板倉善之

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