2010/05/01

連載 撮影回想 7 「藤本七海」




「藤本七海」

『にくめ、ハレルヤ!』沙樹役の配役には相当悩んだ。

関西の事務所にお声がけして数十名の子役の方にオーディションに参加頂いたが、多くの方が「事務所で自己紹介はこうしようとかアドバイス受けて練習してるんだろうなぁ」というのが透けて見えてしまい、こちらが醒めてしまうばかりだった。では全く経験のない素人でいいんじゃないのかと言うと、今回の場合はそれでは難しいとも思い、なるべく経験があり、かつ、あまりかしこばってない方に出会いたくオーディションを繰り返していた。

そして、何度目かのオーディションで出会ったのが藤本七海さんだった。プロフィールに目を通すと「天才テレビくんにレギュラー出演」と書かれてあり、「相当慣れてるんだろうな」とちょっと不安になりながらも自己紹介をして頂いた。

それを見ただけで、藤本七海さんは他の方とは異彩だった。

他の方と同じように訓練された自己紹介だったかもしれないが、それを見てる方に感じさせず「藤本七海さんってこういう人なんだぁ」と素直に思わせられた。自己紹介を完璧に「演じていた」ということだったのかもしれない。エチュードなどをやってもらっても全く臆する事なく演じて、エチュードの相手を驚かせていた。

そのあまりの達者ぶりに、正直「こんな達者な子でいいのか・・・」と悩まなかったわけではないが、やはりお会いした中ではピカイチに魅力的だったので出演をお願いした。

撮影がはじまっても藤本七海さんの魅力は変わらず、映画初出演とは思えない堂々としたものだった。

こんなことがあった。

ある日の撮影の合間に藤本七海さんが「細木数子」のモノマネを始めた。「10歳の女の子が、なんて渋いモノマネをするんだ」と驚いていると、1人の女性スタッフが藤本七海さん扮する「細木数子」に恋愛相談を持ちかける。「細木数子」はその恋愛相談に大人顔負けのするどい回答をズバズバだして、女性スタッフをはじめみんなの度肝を抜いた。

無邪気さと大人っぽさとが混在してて、それが演技なのか素なのかもはやわからなくなって、スタッフみなが藤本七海さんに魅了され、「この子は将来すごい女優になるんじゃないか」と期待した。

藤本七海さんは『にくめ、ハレルヤ!』に出演後、『子猫の涙』や『カンフーくん』に出演し、それらの中でも抜群の存在感を発揮していた。昨年のNHKドラマ『チャレンジド』ではそれまでの「かわいらしさ」を押し出したものだけじゃない、込み入った人物を演じていた。

これから藤本七海さんがどうなっていくのか本当に楽しみだし、初出演作として『にくめ、ハレルヤ!』で出会えたのは、僕としては本当に幸運だったと思う。


撮影時の藤本七海さん。

本編からのキャプチャスチール

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